犬のめまい(眼振)の原因は?|眼振は脳腫瘍の可能性もある

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犬のめまい(眼振)の原因は?


『めまい』という単語はみなさまにも馴染みがあるかと思います。

しかし、『めまい』は犬にもあります、というと飼い主様は「えー!犬にもあるの?」とよく驚かれます。

今日は犬の『めまい=眼振』について解説していきます。

実は怖い病気が隠れていることもありますので、しっかり解説していきますね。

■目次
1.犬の眼振とは?
2.犬の眼振の原因
3.眼振の原因を診断するためには
4.主な眼振の原因への治療方法
5.眼振のある犬の日常ケア
6.まとめ

1.犬の眼振とは?

まず、『めまい』とは体の平衡感覚が崩れることを指します。

平衡感覚が崩れると、ふらつきや目が回る、真っ直ぐ歩けない、気持ち悪くなる、嘔吐などの症状がでます。

『めまい』は前庭性非前庭性に分かれます。

犬のめまいはこの前庭性に当てはまり、飼い主様は

・目が揺れている

・ずっと同じ方向に回っている

・嘔吐している

・斜頸(首を傾げている)している

・まっすぐ進めず転ける

・食欲がない

・元気がない

といった症状で、ご相談に来られます。

この中でも目が揺れているというのが「眼振」というものなのですね。

我々人間が日常生活でよく聞くめまいは非前庭性であり、眼振は伴いません。

2.犬の眼振の原因

眼振を起こす原因は中枢性末梢性で大きく異なります。

中枢性は脳に異常がある場合を指し、末梢性は正しい平衡感覚を脳に伝えるルート(神経)に異常がある場合を指します。

中枢性には

・水頭症

・脳腫瘍

・脳炎

・頭部外傷

・脳血管疾患(梗塞や出血など)

・肝性脳症

・腎疾患

・甲状腺機能低下症

などが挙げられ

末梢性では

・甲状腺機能低下症

・中耳炎/内耳炎

・中耳や内耳の腫瘍

などが挙げられます。

3.眼振の原因を診断するには

診断は一般的な身体検査血液検査神経学的検査レントゲン検査があります。

少し特別な検査ですが、MRI検査を行うこともあります。

身体検査では体温や体重はもちろん、痛みや炎症が無いかなど、全体的に見ていきます。

血液検査では、眼振を起こす原因が腎臓や肝臓など、内臓が原因で起こっていないかを確認することが可能です。

神経学的検査では、眼振が出ていない症例でも、刺激によって誘発される誘発性の眼振が無いか確認します。

中耳炎の診断に、頭部のレントゲン検査が有用な場合があるため、疑わしい場合はレントゲン検査も実施します。

以上の検査により、頭の疾患の可能性が疑われた場合はMRI検査を実施します。

MRI検査では脳炎や脳腫瘍、脳梗塞や出血、中耳・内耳の炎症や腫瘍を診断することが可能です。

以上こういった検査により、眼振の原因を診断することが可能です。

4.主な眼振の原因への治療方法

様々ある眼振の原因の中でも、日常的によく遭遇する、中・内耳炎頭蓋内疾患特発性前庭疾患の治療について解説していきます。

中・内耳炎末梢性前庭障害の最も多い原因とされています。(約50%)

中・内耳炎は一般的に細菌感染であり、犬の場合は、その多くが外耳炎からくるものとされています。

一般的な治療は洗浄と抗生剤です。この抗生剤は細菌に対して適切であるものを選択する必要があります。

また、中耳の粘膜浮腫や分泌物を減らすことを目的にステロイドを使用する場合もあります。

ただし、ステロイドは細菌感染を悪化させる可能性があるため、使用には注意しなければなりません。


次にご紹介するのは頭蓋内疾患の治療ですが、治療方法はその疾患によりさまざまです。

頭蓋内疾患には脳炎腫瘍が多いと言われています。

感染性の脳炎であれば抗生剤や抗真菌薬、消炎剤を使用し、感染ではない脳炎の場合は免疫抑制剤や抗てんかん薬(てんかんが今後予測される場合や起こっている場合)脳圧を下げる薬剤を使用します。

また、脳炎の種類によっては放射線治療や抗がん剤の使用も検討します。

犬の脳腫瘍で最も多いのは髄膜腫で、2番目は神経膠腫と言われています。

脳腫瘍の治療は原因となる腫瘍の除去や縮小や腫瘍を原因とする二次的な症状に対して行われます。

腫瘍に対する治療は外科治療、化学療法、放射線療法、免疫療法をその症例ごとに組み合わせて行います。


最後にご紹介するのが特発性前庭疾患です。

特発性の前庭疾患は高齢犬で見られることが多く、原因がわからない時にこの診断名が付けられます。

発症の経過が急性であり、症状も軽度〜重度までさまざまです。

多くの場合は72時間以内に回復することが多いとされており、2〜3週間で完全に回復すると言われています。

身体検査や神経学的検査、血液検査や毒物や薬剤の摂取歴がなければ3日間程度を目安に経過を観察することもあります。

状態によってはステロイドの使用を検討しますが、ステロイドは回復の速度には寄与しないと言われています。

5.眼振のある犬の日常ケア

眼振を伴っている犬の多くは、目が回り悪心食欲不振に陥ります。

飲水も困難なことが多いため、脱水を起こすことも多いです。

そのような時は病院で点滴や吐き気止めの注射などの対症療法を行います。

投薬が困難な場合は抗生剤やステロイドなどの注射を一緒に行うことも可能です。

こういった症状がある場合は動物病院に連れていくようにしましょう。

また、お家でのケアでもできることがあります。

眼振を伴っている犬の場合は、家でも転ぶ・ぶつかることが予想されます。

何もない安全な広いスペースを確保し、サークルなどで他の場所と区切るようにしましょう。

転んだ時も頭を打たないようにクッションを置く工夫も大切です。

サークルで仕切ることが難しい場合は家具の角などで怪我をしないようにぶつかっても痛くない素材で角をカバーするようにしてください。

階段や段差がある場合も要注意です。

階段にはゲートなどを設置し、侵入できない工夫をしてください。

段差はタオルなどを使用し、足が引っ掛からないように注意してください。

6.まとめ

『眼振』はそこまで珍しい症状ではありません。

しかし眼振を起こす原因は多岐に渡り、一般的な中耳炎から脳腫瘍などの重篤なものまで様々です。

中耳炎でも、重篤な脳腫瘍でも早期に治療を開始することが症状緩和につながります。

目が揺れている、真っ直ぐ歩けない、首を傾げているといった症状がある場合はすぐに動物病院へご相談ください。


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