2024/02/05
犬と猫のぶどう膜炎について
犬や猫のぶどう膜炎は、目のぶどう膜という部分に炎症が生じる眼科の疾患です。この炎症は痛みを引き起こし、場合によっては視覚障害を伴うこともあります。
今回は犬と猫のぶどう膜炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
「ぶどう膜」は目の虹彩、毛様体、脈絡膜で構成されている目の組織で、目に栄養を与える血管がたくさん分布しています。ぶどう膜炎は、このぶどう膜に炎症が起こることで発症します。
ぶどう膜炎の原因は、主に目の病気によるものと、全身の病気によるものがあります。
■ぶどう膜炎の原因となる目の病気
・白内障
・ぶどう膜皮膚症候群
・結膜炎、角膜炎、強膜炎
・外傷やそれによる角膜潰瘍
・腫瘍
・ウイルスや細菌、寄生虫、真菌などへの感染
・免疫介在性疾患(過敏症、自己免疫疾患)
・腫瘍
■ぶどう膜炎の原因となる全身の病気
・糖尿病
・高血圧症
・高脂血症
・血液凝固不全
・感染症(猫伝染性腹膜炎、猫免疫不全症候群、猫白血病など)
・中毒
・薬物
犬では過敏症が最も多く、猫では感染症が多いとも言われていますが、ほとんどは原因のはっきりしない「特発性」とされています。
症状
ぶどう膜炎では、以下のような症状が見られます。
・目をしょぼつかせる(目の痛み)
・涙が多い
・充血
・まぶたがピクピクする
・瞳孔が小さくなる(縮瞳)
症状は片目だけの場合もあれば、両目ともに見られることもあります。
ただし、脈絡膜のぶどう膜炎は、初期はほとんどが無症状で、早期に発見されないこともあります。
症状は軽いものから重いものまでありますが、白内障や緑内障につながることもあり、放っておくと失明してしまうこともあるので注意が必要です。
診断方法
似たような症状が見られる目の病気はたくさんあるため、それらと鑑別するために身体検査に加えてスリットランプ検査、眼底検査、眼圧検査など、目の検査を行います。
また、全身の病気が原因になることもあるため、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを行い、原因を探ります。
治療方法
原因がわかった場合は原因に対する治療を行いますが、特発性の場合は症状を緩和する治療が中心となります。
ぶどう膜炎は治療をせずにいると白内障や緑内障に移行し、最終的に失明してしまう恐れがあるため、抗炎症作用のある点眼薬や内服薬で炎症を抑える必要があります。
予防法やご家庭での注意点
多くが特発性であるため予防は難しいかもしれませんが、ほかの病気が原因で発生することもあるため、普段から健康状態には注意し、定期健診など健康チェックに努めましょう。
猫では猫伝染性腹膜炎や猫免疫不全症候群、猫白血病など、感染症が原因となることも多いので、混合ワクチンの接種に加えて、完全室内飼いにすることで感染を予防しましょう。
まとめ
ぶどう膜炎は目に見えた変化が起こりやすい病気なので、飼い主さまが気付きやすい病気です。
しかし、すぐに命に関わるものではないため、軽く見られてしまい、ときどき、受診が遅れてしまうケースもあります。
ちょっと目を気にしている程度、ちょっと目が赤い(充血している)程度でも、治療せずにいると悪化して失明することもありますので、少しの異変でもなるべく早めに受診するようにしてください。
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