2025/05/28
猫の角膜穿孔について|内科治療で治癒した症例
「猫が目をしばしばさせている」
「目を閉じて開きにくそう」
このような症状が見られる場合は、もしかしたら目に傷がついているかもしれません。
目の表面の角膜に傷がついた状態を角膜潰瘍といい、この傷が深く角膜に穴が開いた状態を角膜穿孔といいます。
角膜穿孔は放っておくと視力を失うこともあるため、早期発見と治療が重要です。
今回は角膜穿孔について実際の症例を交えつつご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の目の健康を守りましょう。
角膜穿孔とは
角膜穿孔とは、目の表面を覆っている角膜という透明な膜に傷がつき、穴が開いた状態をいいます。
物を見るときにレンズの役割を担う水晶体を保護しているのが角膜です。そして角膜と水晶体の間は、眼房水と呼ばれる眼に栄養を届ける液体で満たされています。
角膜穿孔が引き起こされると、眼房水が漏れ出して目の構造を維持できず、失明するリスクもあります。
角膜穿孔の原因
猫の角膜穿孔の原因として一番多いのは、ウイルス感染です。ヘルペスウイルスへの感染により角膜炎を発症し、角膜穿孔に進行していくケースが多くみられます。
ヘルペスウイルスは猫風邪と呼ばれることがあるほど身近な病気です。混合ワクチンの接種によって重症化を予防することができるため、定期的にワクチン接種を行いましょう。
また、角膜穿孔は外傷によって引き起こされることもあります。猫同士の喧嘩や、アレルギーのかゆみで目を擦ることなどでできた傷が悪化すると、角膜穿孔まで進行することがあります。
角膜穿孔の症状
角膜穿孔が起こると、以下のような症状が見られます。
目を細める、目が開きづらい頻繁に目をこする
涙が多く出る
目の表面に濁りがある
白目が充血している
また、猫は強い痛みを感じることが多いです。
角膜穿孔の治療法
角膜穿孔の大きさや炎症の程度により治療法は異なります。
軽度の場合、抗生剤の点眼薬や内服薬で感染を抑えながら、角膜保護効果のある点眼薬を用いて傷の修復を促します。
また、猫自身の血液の成分を使って作成する血清点眼薬を使用することもあります。血液成分中にはビタミンや細胞を直す成分が含まれており、傷の修復を助けるためです。
しかし、穿孔が大きい場合は外科的な修復が必要になることも少なくありません。具体的には、角膜移植や角膜を縫い合わせる方法などがあります。
角膜穿孔の実際の症例
猫の角膜穿孔の実際の治療例をご紹介します。
これは治療前の写真です。
目の中心部が炎症や内出血を起こし、白や赤に濁っています。目についた傷を染める染色液を用いた検査を行ったところ、角膜穿孔していることがわかりました。
また、右上部分に血管が見えますが、これを血管新生と呼びます。
通常、目の表面には血管はありません。しかし、角膜の傷を治すためには酸素や栄養を十分に届ける必要があり、一時的に血管が伸びることでこのような見た目になります。
この症例は、抗生剤の点眼薬と角膜の治癒を促す点眼薬を使用して治療しました。
これは治療後の写真です。
中心部に白い濁りは少し残りますが、治療前と比較すると黒目がはっきり見えるまでに傷が回復しました。
角膜穿孔の修復過程で、角膜のすぐ下にある虹彩という黒目の大きさを調節する構造が変形しています。この写真からは黒目の周りが角膜側に引っ張られていることがわかります。
目の色や構造に変形は見られますが、視力を失うことなく治療することができました。
まとめ
角膜穿孔は、猫にとって痛みを伴う危険な状態ですが、早期発見と適切な治療を行うことで視力を守ることができます。
今回の症例では、早期の治療により外科手術を行うことなく、内科治療での回復となりました。
角膜穿孔は悪化が早いため、猫の視力を守る上では飼い主の迅速な対応が重要です。
もし、猫が目を頻繁にこすったり、目を開けづらそうにしている場合はすぐに当院にご相談ください。
奈良県生駒市の動物病院
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