犬の目の黒い点について|考えられる病気や治療法を獣医師が解説

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犬の目の黒い点について|考えられる病気や治療法を獣医師が解説

横から見た時の白いチワワ
犬の目に黒い点のようなものを見つけたことはありますか?
大切な愛犬の目に正体のわからない黒い点があったら心配ですよね。

「目にできた黒い点のせいで犬の目が見えなくなってしまったらどうしよう。」
「重篤な病気の可能性はある?」
「目の黒い点は治療で消えるの?」
このようなお悩みを抱えていらっしゃる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は犬の目の黒い点について解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の目の健康についての知識を深めていただければ幸いです。

犬の目の黒い点で考えられる病気

犬の目に黒い点が見える時にはいくつかの病気が考えられます。
例えば

  • 乾性結膜炎(KCS)による角膜色素沈着
  • 色素性角膜症
  • 目の腫瘍

などです。
それぞれについて詳しく解説していきます。

乾性結膜炎(KCS)による角膜色素沈着

乾性角結膜炎(KCS)とは、涙の量が減って目の表面が乾いてしまうことが原因でおこる目の炎症です。
人間でいう「ドライアイ」がひどくなった状態ですね。
KCSが慢性化すると炎症細胞が角膜上皮という目の表面の部分に入り込んで色素沈着をおこすことがあり、この色素沈着が黒い点としてみえることがあります。

色素性角膜症

色素性角膜症とは、角膜にメラニン色素が沈着する状態を指します。
メラニン色素とはホクロやシミなどの黒い色を作り出す色素のことです。
最初は目頭の方から黒くなってきて、病気が進行するにつれて目の表面全体に拡がっていきます。
前述のKCSによる角膜色素沈着と似たような見た目の病気ですが原因が異なります。
色素性角膜症の原因は遺伝性で、その重症化には性ホルモンが関係していると言われています。
KCSによる角膜色素沈着では涙の量が少ないと重症化しますが、色素性角膜症では涙の量と重症化にはあまり関係がありません。
色素性角膜症はパグやブルドッグなどの短頭種で多くみられ、避妊した雌では発症が少ないといわれています。
また、黒い毛色の犬の方がその他の毛色の犬より色素沈着が軽度であるともいわれていますね。
このような理由から色素性角膜症の原因は遺伝性で、その重症化には性ホルモンが関係していると考えられています。

目の腫瘍

目に発生する腫瘍の中で最も多くみられるものの1つに黒色腫というものがあります。
黒色腫という名の通り黒い色素をもつ細胞の腫瘍です。
目の黒色腫は犬の眼球の白目の部分と黒目の部分の境目に多く発生します。
黒色腫には良性のものと悪性のものがありますが、目に発生する黒色腫は良性のものがほとんどです。
良性の黒色腫は他の臓器に転移することは少ないですが、腫瘍が大きくなると白目の部分を突き破って眼内出血などを引き起こすことがあります。

犬の目の黒い点の治療

歳をとったシーズー

犬の目の黒い点の原因となる病気はどのように治療するのでしょうか。
それぞれの病気ごとに解説します。

乾性結膜炎(KCS)による角膜色素沈着

KCSによる角膜色素沈着は目の乾燥が原因の病気であるため、点眼薬を使って治療を行います。
KCSによる角膜色素沈着で点眼薬を使用する目的は

  • 涙量の回復
  • 乾燥からの防御
  • 感染の制御

などです。
点眼薬には色々な種類があり、それぞれが持つ効能は異なります。
病態によっていくつかの点眼薬を組み合わせて併用することもあります。

色素性角膜症

色素性角膜症には根本的な治療法はありません。
KCSによる角膜色素沈着での治療と同じような目的で様々な種類の点眼薬を用いたり、目の周囲の被毛が目に入らないように整えたりして症状の改善を目指します。

目の腫瘍

目の黒色腫の治療法は

  • 部分摘出
  • 眼球摘出
  • 放射線療法
  • 化学療法

などです。
腫瘍の大きさや発生部位によっては部分摘出が困難なこともあります。
このような場合には眼球を丸ごと摘出する眼球摘出術が選択されます。
悪性の黒色腫の場合も眼球摘出が選択されることが多いです。
悪性の黒色腫の場合は再発などの可能性があるため、放射線療法や化学療法を手術と併せて行うこともあります。

犬の目の黒い点は悪化するとどうなるか

犬の目に黒い点を見つけたとき、すぐに病院につれていくべきか悩むこともありますよね。
犬の目の黒い点が単純な色素沈着である場合はそこまでの緊急性はないといえるかもしれません。
しかしKCSが原因の場合はなるべく早く治療をしてあげることで犬の不快感を和らげる効果が期待できるでしょう。
黒色腫が原因の場合は良性のものがほとんどのため、直ちに手術をしなければならないというわけではありません。
しかし長い間放っておいてしまうと腫瘍が大きくなりすぎて眼球破裂などを起こしてしまう可能性もあります。
犬の目の黒い点がどんなものなのかは動物病院で診察や検査を受けないとわかりません。
犬の目の異変に気がついたらなるべく早く動物病院を受診することをおすすめします。

まとめ

腕を枕にして寝ているトイプードル

いかがでしたか?

犬の目の黒い点にはいくつかの原因があり、手術が必要になることもあります。
犬の目の黒い点を見つけてから長い間放っておくと犬の不快感が長引いたり、治療の難易度が上がってしまうかもしれません。
愛犬の異変に気がついたらなるべく早く動物病院に連れて行きましょう。

当院は眼科診療に力を入れており、目に関する手術にも対応可能です。
犬の目について少しでも心配なことがありましたらぜひ当院にご相談ください。