2025/10/14
犬の目の赤み|まぶた・白目・黒目の赤みと受診サインを獣医師が解説
「うちの子の目が赤いのですが…」
犬の目の赤みに気づいたとき、多くの飼い主さんが心配され、ご相談のお電話をいただきます。
一概に「犬の目が赤い」といっても、
- まぶた(目の周り)が赤いのか
- 白目が充血しているのか
- 黒目が赤くなっているのか
など、部位によって原因も緊急度も大きく違います。
この記事では、獣医師の視点から以下をご紹介します。
- 犬の目の赤みについて部位別の解説
- 動物病院受診の判断
- ご家庭でできるケア方法
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の健康管理に役立てていただけると幸いです。
犬の目の周り(まぶた)が赤いとき
まずは「目の中」ではなく「目の周囲」が赤くなっている場合について解説します。
感染性、アレルギー性など原因は様々です。
よくある原因
犬の目の周囲に赤みがあるときは主に以下の原因が挙げられます。
- アレルギー
- 眼瞼炎(まぶたの炎症)
- 麦粒腫(ものもらい)
アレルギー
アレルギーでは花粉やハウスダスト、食べ物などが刺激となり、まぶたが赤くなることがあります。
かゆみを伴い、顔をこすりつける行動が増えるのが特徴です。
眼瞼炎(まぶたの炎症)
眼瞼炎は、細菌感染や外傷、シャンプーの刺激などをきっかけに起こります。
目を足で搔いた際にできた小さな傷から感染が広がることもあります。
アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の犬では特に見られやすい病気です。
麦粒腫(ものもらい)
麦粒腫は、まぶたの脂の腺が詰まることが原因です。
部分的に赤く腫れる、しこりができるといった症状が見られます。
動物病院受診の判断
まぶたの赤みに関して、すぐに病院に連れて行くべきか迷われる方も多いと思います。
動物病院受診の目安となるサインは以下の通りです。
- まぶたの腫れが強い
- 膿が出ている
- 同じ症状を何度も繰り返す
放っておくと辛い症状が長引いてしまう場合もあります。
早めに動物病院での診察を受けることで、治療期間も短縮できることが多いです。
犬の白目が赤いとき(結膜や強膜の異常)
飼い主さんにとって一番気がつきやすいのは「白目の赤み」です。
白目は強膜と、それを覆う結膜からなります。
白目の赤みは、強膜や結膜の炎症や充血によって起こるものです。
よくある原因
犬の白目が赤くなる原因としては、主に以下の原因が挙げられます。
- 結膜炎
- アレルギー性結膜炎
- 乾性角結膜炎(ドライアイ)
- 外傷や異物
- 結膜下出血
結膜炎
結膜炎は細菌やウイルス感染、異物、シャンプー後などで生じます。
涙や目ヤニが増えるのが特徴です。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストが原因になることが多いです。
かゆみが強く、くしゃみや鼻水を伴うこともあります。
乾性角結膜炎(ドライアイ)
乾性角結膜炎は、涙の分泌が減ることで慢性的に赤みや粘り気のある目ヤニが出る病気です。
シーズーなどの犬種に多く見られます。
外傷や異物
外傷や異物由来の目の赤みは、散歩中に砂や草、まつ毛などが目に入ることなどで起こります。
両目に外傷や異物が及んだ場合、両目ともに起こり得ます。
確率としては片目だけの場合が多く、急に片目だけ赤くなるのが特徴です。
結膜下出血
結膜下出血は白目に赤い斑点が出ます。
出血が小さければ自然に吸収されることもあります。
中には外傷や全身の病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。
動物病院受診の判断
以下のような症状が見られる場合は動物病院受診をおすすめします。
判断に迷った際の目安になれば幸いです。
- 目の赤みが2日以上続く
- 黄緑色のドロッとした目ヤニが出る
- 片目だけが急に真っ赤になっている
- 痛そうに目を細めている
特に、黄緑色の目ヤニは細菌感染のサインです。
自己判断で様子を見ずに、迷った際には早めに動物病院を受診しましょう。
犬の黒目が赤いとき(角膜や眼内の異常)
「黒目が赤い」というのは、実はとても要注意のサインです。
角膜や眼球内部の病気が隠れている可能性があります。
よくある原因
犬の黒目が赤くなる原因としては、主に以下の原因が挙げられます。
- 角膜炎・角膜潰瘍
- 緑内障
- ブドウ膜炎
- 眼内出血
角膜炎・角膜潰瘍
角膜炎や角膜潰瘍は、外傷や異物によって角膜に傷がつくことが原因で起こります。
角膜炎や角膜潰瘍になると、強い痛みや涙が出ます。
血管が入り込んで赤く見えるようになるのが特徴です。
緑内障
緑内障は眼圧が急激に上昇する病気で、強い痛みや失明につながる危険があります。
緑内障になると、黒目が赤く大きく見えることもあります。
緊急性が非常に高い点が特徴です。
ブドウ膜炎
ブドウ膜炎は眼球内部に炎症が起こる病気です。
ブドウ膜炎になると、光をまぶしがったり、涙が多く出ることがあります。
眼内出血
眼内出血は外傷や高血圧、腫瘍などが原因となります。
眼内出血になると、黒目全体が赤く染まることがあります。
動物病院受診の判断
黒目の赤みは緊急度が高いケースが多く、失明につながる病気の可能性もあります。
気付き次第なるべく早く動物病院を受診しましょう。
おうちでできるケアなど
愛犬の目の健康のためにご家庭でできるケアをご紹介します。
清潔に保ち、刺激を避け、日常的にチェックしてあげることで、症状の悪化を防ぐことにつながります。
- 清潔に保つ
- 環境を整える・部屋を清潔にする
- 散歩後のチェック
- 記録を残す
では、それぞれについて詳しく解説します。
清潔に保つ
目ヤニが出ている場合、ぬるま湯で湿らせたコットンやガーゼで、目頭から目尻に向かってやさしく一方向に拭き取りましょう。
固まってしまった目ヤニは無理に取らず、濡らしたコットンを数秒置いてから拭き取ります。
ティッシュは繊維が荒く、目を傷つける恐れがあるため使用しないようにしましょう。
環境を整える・部屋を清潔にする
部屋を清潔に保ち、換気をこまめに行うのもおすすめです。
特にタバコや強い香りの芳香剤、植物の花粉は目の刺激につながりますね。
喫煙者がいるご家庭や、植物を育てているご家庭は特に注意しましょう。
散歩後のチェック
草むらや砂埃が多い場所を散歩したあとにはまぶたを広げ、異物が入っていないかをチェックするのがおすすめです。
異物があれば、清潔なぬるま湯や犬用の目薬、または清潔な容器に入れた水道水で優しく洗い流してあげましょう。
このとき、眼球を傷つける可能性があるため、目を強くこすったり、無理に異物を取り除こうとしないようお気をつけください。
記録を残す
経過観察する場合は、「片目か両目か」「腫れやかゆみ、しこり、分泌物の有無」などを記録すると受診時に役立ちます。スマホで写真を残しておくのもおすすめです。
まとめ
今回は犬の目の赤みについて、部位別の原因と動物病院受診の目安、ホームケアをご紹介しました。
犬の目の赤みは「ちょっとした充血」と思われがちですが、実は重大な病気のサインであることも少なくありません。
特に黒目の異常や急な赤みは緊急度が高く、早期の診断と治療が大切です。
当院では犬の眼科診療に力を入れており、目の赤み・充血・涙やけなどの症状にも対応しています。
「これくらいで病院に行っていいのかな…」と迷われた際も、どうぞお気軽にご相談ください。
奈良県生駒市の動物病院
Rootsどうぶつ病院