猫の尿石症|排尿困難になる可能性がある怖い病気を解説

猫の尿石症について

尿石症は猫の腎臓や膀胱などで結石ができてしまう病気で、比較的よく診断される病気です。

尿石症は適切な治療が行われずに悪化していった場合に命に関わることもあります。

そこで今回は、尿石症はどのようなものなのか、どのような治療が適切か、予防方法などを解説していきます。

しっかり学んで日常生活のケアに役立てくださると嬉しいです!

■目次
猫の尿石症とは?
尿石症の原因
尿石症の症状
尿石症の診断方法
尿石症の治療
尿石症の予防
まとめ

猫の尿石症とは?

尿石症は、その字の通り猫の尿路に結石が形成される病気です。

尿路とは下の画像のように腎臓、尿管、膀胱、尿道という尿に関わる臓器の総称です。

腎臓で血液から尿が作られ、尿管を通って膀胱に尿が運ばれ、膀胱で尿を溜め、尿道を通って体の外に排泄されます。

尿石症はこの尿路のいずれかに結石が形成される病気で、それぞれ形成される場所によって呼び名が変わってきます。

 腎臓に結石が形成された場合:腎結石

 尿管に結石が形成された場合:尿管結石

 膀胱に結石が形成された場合:膀胱結石

 尿道に結石が形成された場合:尿道結石

このうち尿管と尿道は画像のように細くなっているので結石が詰まってしまうことがあります。

尿管と尿道に結石が詰まった場合は尿管閉塞尿道閉塞という呼び方になります。

尿管閉塞や尿道閉塞を起こすと、尿を排泄することができなくなり、急性腎障害を引き起こし、場合によっては命に関わることがあります。

命に関わる状況になると治療も複雑になるため、そうなる前に予防をしっかり行うことが大事ということが言えますね。

尿石症の原因

尿石症の原因は多岐にわたります。

主な原因として

・不適切な食事

・水分摂取不足

・遺伝的要因

が挙げられます。

結石はストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)シュウ酸カルシウムの2種類の成分から形成されることが多く、この2種類が猫の全結石の9割を占めていると言われています。

食事の成分によって尿のpHが変わり、この尿のpHが上がるとストラバイトができやすくなり、pHが低くなるとシュウ酸カルシウムができやすくなります。

不適切な食事を摂取すると、正常な尿のpHではなくなってしまうので、結石ができる原因となってしまうということですね。

また、尿が濃くなればなるほど、尿中の結石の成分も濃くなってしまうので、結石が形成されやすくなります。

水分の摂取不足によって尿が濃くなってしまうと結石ができる原因となってしまうということですね。

食事も適切なものを摂取していて、水分摂取も十分なのに結石ができてしまった…というケースもあります。

その場合は遺伝的要因が関係していることがあります。

特にスコティッシュフォールドマンチカンアメリカンショートヘアーなどは、尿石症を発症して診察に来院されることが多いです。

これらの種類の猫ちゃんを飼われている方は特に注意しましょう。

尿石症の症状

尿石症の症状は結石が形成される場所によって異なります。

腎結石の場合は大きな症状を発症することが少ないです。

尿管結石の場合は尿管閉塞を引き起こすと、尿の排泄ができなくなり急性腎障害が引き起こされます。

そのため、血尿が出たり、尿量が減ったり、急性腎障害により元気消失、食欲不振、嘔吐が見られます。

膀胱結石の場合は、痛みや下腹部の違和感を感じます。

そのため、血尿、頻尿、排尿時の痛みが見られます。

トイレに行く回数が増えたり、排尿時に鳴き声をあげることがあれば注意が必要です。

尿道結石は、ほぼ全ての場合尿道閉塞を発症しているので尿が全く排泄されなくなります。

そのため、トイレに行くけど排尿ができないという症状が見られます。

尿道閉塞の症状が最も緊急性が高いのでこういった症状が見られた場合はすぐに動物病院に連れていくようにしましょう。

尿石症の診断方法

尿石症の診断にはX線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査が必要とされます。

実際にこういった検査で結石が見られたら尿石症と診断します。

一般的に泌尿器系の検査では尿検査がイメージつきやすいと思いますが、実は尿検査で尿石症を診断することはできません。

ただし「尿石症に対して尿検査を行っても意味がない」というわけではありません。

尿石症に対して尿検査をすると、尿のpHや尿石のかけら(結晶)を確認し、結石の成分を調べ、今後の食事療法や薬物治療に役立てることができます。

尿検査は尿石症に対してとても役に立つ検査ですが

「尿検査で異常がないから尿石症じゃないんだ」

と思ってしまうと尿石症の発見が遅れてしまうことがありますので、注意するようにしましょう。

尿石症の治療

治療には食事療法、薬物療法、手術があります。

それぞれご紹介します。

食事療法

様々なメーカーが尿石用の療法食が販売しています。

療法食は主にpHを下げることによってストラバイトをできにくくしたり、塩分を多く配合し、尿量を増やすことで結石をできにくくするというコンセプトで作られています。

中には肥満に配慮した療法食や嗜好性にこだわった療法食などが販売されているので、その子その子にあった療法食を選択するのが良いでしょう。

薬物療法

薬物療法はpHを調整するサプリメントを用いることが多いです。

薬物療法がメインの治療で行われることは少なく、食事療法の補助や食事の選り好みからそもそも療法食を食べてくれない子に使われることがあります。

手術

食事療法や薬物療法での治療が困難な場合には手術が行われることがあります。

手術は結石の発生する部位によって様々な方法が行われます。

最も多く行われる手術が膀胱結石に対して行う膀胱切開術です。

膀胱を切開して結石を取り出す手術ですね。

そのほかの手術にも、尿管結石に対して行う尿管切開術、尿管膀胱新吻合術、SUBシステムや尿道を拡張し結石を閉塞させないようにする会陰尿道ろう造ろう術などがあります。

術式によっては高度な外科技術が必要とされるため、専門の施設での治療が必要となります。

いずれも全身麻酔をかけて行う必要があったり、体に負担のかかる処置になるので、もし手術を選択する場合は慎重に決めなければいけませんね。

尿石症の予防

時には命に関わる病態になる尿石症で最も大事なのは予防することです。

尿石症の予防には適切な食事を与えることと飲水量を増加させることの二つがあります。

適切な食事はその子その子によって変わってきます。

一度動物病院で相談してみましょう。

飲水量を増加させるためには以下の方法があります。

・常に新鮮な水にする。

・循環式のウォーターファウンテンを導入する

・お湯が好きならお湯を飲水用の水にする。

・蛇口から飲むのが好きなら蛇口から飲んでもらう。

・お風呂の水が好きならお風呂場を開放する。

・ステンテスではなく陶器の器にする。

衛生面も考えなければいけないですが、基本的には猫の好みに合わせるのが大切ですね。

ここで一つ注意点ですが、飲ませる水にミネラルウォーターは使ってはいけないということですね。

ミネラルウォーターには結石の原因となる成分が多く含まれていることがあります。

水道水や猫用の水として販売されているものを使うと良いでしょう。

まとめ

猫の尿石症は猫ちゃんの病気の中で比較的多く遭遇する病気です。

尿石症が悪化した時には尿管閉塞や尿道閉塞を引き起こし、時には命に関わるほどの急性腎障害を引き起こすことがあります。

予防方法を徹底的に見直し、愛猫を尿石症にさせないことが最も重要です。

また、尿石症の予防をしっかり行っていても遺伝的要因から尿石症になってしまう猫もいます。

そういう場合は定期的な健康診断を行い、早期発見治療をすることで命に関わる事態を避けるようにしましょう。

尿石症の症状に心当たりがある方や愛猫に健康に過ごしてもらいたい方はいつでもご相談ください。


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